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名古屋地方裁判所 昭和45年(ワ)1534号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕<証拠略>および前記一(事故の発生)の当事者間に争いのない事実を総合すると次の事実を認めることができる。

イ 本件事故現場は、名古屋市緑区鳴海町字小坂六番地の二先にある東西に通ずる幅員4.1メートルのアスファルト舗装の道路で、直線道路であるため前方に対する見とおしはよい。現場の道路北側には鈴村鋳治方の住宅があり、その家の前の空地(幅員4.6メートル、奥行は加害車両が完全に入ることができる)が右道路まで続き、右道路と直角に接している。右鈴村方の西側は小高い土手があり、松の木が数本立つており、鈴村方から右道路に出る際は道路側端(北)まで出ないと西方に対する見とおしはよくない。加害車両(普通貨物自動車、トヨエース)は右空地内に前部を北側、後部を南側にして駐車させてあつた。

ロ 被告は、昭和四四年四月三〇日午前九時一五分ころ、右加害車両を運転して右空地を出て右道路を東進しようとして、同車の方向転換をはかるべく道路西方に後進して出ようとした。そこで、被告は同車の運転席から道路の左右の安全を確めて運転席の後部窓から後方を見ながら後進をはじめ、約1.8メートル進んで同車の後部がやや西側に向きを変え、後部が道路側端から、西(左)側で約五〇センチメートル、東(右)側で約七〇センチメートルはみ出したとき、原告が被害車両(原動機付自転車、ヤマハ五〇)を運転して西方から東進してくるのを自車左後部から約22.8メートル先に認め、加害車両を停車させ、そのまま原告の動静を注視しながら通過を待つていたところ、原告がこれに気付かずに進行したため、加害車両の左後部を被害車両の前部に衝突させたものである。

ハ 他方、原告は、被害車両を運転して右道路を西方から時速約三、四〇キロで東進して本件現場にさしかかつたが、右方をみながら進行し前方を注視していなかつたため、前記のとおり、加害車両に気付かず、また、原告の後続車の運転者石垣高司が危険を感じ、警笛を吹鳴して原告に注意を喚起したがこれにも気付かずそのまま進行して、前記のとおり、加害車両の後部に衝突したものである。

以上の事実を認めることができ、<反証排斥略>。

右認定事実によると、本件事故は、原、被告の次の各過失がかさなり合つて発生したものであることがわかる。すなわち、被告には、加害車両を後進させる際、右道路の左右の交通の安全を確かめて、もし道路を直進する車両がある場合は、これを優先させ同車の通過を待つて進行すべき注意義務があるのにこれを怠り、加害車両の運転席からの見とおしが完全でないのに同所から右道路の左右の安全を確めたのみで、後進をはじめた過失および原告を発見してからも警笛を吹鳴するか大声を出すなどして原告に注意を喚起し、衝突回避の措置(被告が原告を発見した地点が自車左後部から約22.8メートル先であり、原告のスピードが時速三、四〇キロメートルであるとすると、一秒間に一〇メートル位進行することになり、二秒位ではギアーチェンジして前進し自車を空地に戻すことができたかどうかは疑わしい)をとるべきであるのに、これを怠り、まんぜん原告の動静を注視していた過失があり、他方、原告には、被害車両を運転していた際、前方を注視しておれば、加害車両を発見して、同車の後方南側を無事通過するか、同車の直前で停車することができたのに、これを怠り、まんぜん右方を見たまま進行した過失があることが認められる。

そうすると、被告は自動車の進行に関し注意を怠らなかつたとはいえず、被告主張の右免責の抗弁は理由がないが、右事情は過失相殺として、原告の後記損害を減額する理由として考慮することとする。そして、両者の過失の割合は、おおよそ、原告を八〇、被告を二〇と認めるが相当である。 (大津卓也)

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